連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第5章 [《第5章》 第4章が2回入力したので、この章は無料です。
「いや、心当たりはない。あまりにもリアルだったから少々びっくりしてしまったんだよ。それにしても、雅治君は、驚くほど元気になったね。まるで手術前とは別人のようだ」
 直人は自分でそう言って、その言葉に自分で驚いた。言わなければ良かったと後悔した。雅治は確かに性格も変化してきている。身体が元気になった分、自信がついて来ただけだと思おうとしたが、パックスとユンカの名前を聞かされた今、直人にはそう思うにはかなり無理があった。

(おかしい。確かに美佳と雅治の夢には何かある。だが、そうだとしても、自分にいったい何ができると言うのだろう。ただじっと見守っているしかないないじゃないか)

 直人は、ユンカの事を、どうしても美佳には言えないでいた。
 直人には本妻との間に、倖という娘がいたのだが、その娘の倖も心臓疾患を持っていた。そして去年の夏、倖も雅治と同じ心臓移植を受けていたのだ。
 直人は常に、自分は卑劣な人間だと思って来た。美佳に会うたびに、その事が言えず心が痛かった。

 倖の心臓病は、雅治よりも進行していた。症状もひどく、一刻を争っていた。
 そんな時立花から話を持ちかけられたのだ。美佳の事で妻を苦しめていた直人は、倖の心臓を治すことで、妻の心労を少しでも軽減しようとした。いや、それはうまい言い訳かもしれなかった。
 本当は怖かったのだ。自分のしでかしたことで、全てを失ってしまう事が怖かったのだ。ずるい自分に直人は初めて直面した。

 そして、直人の選んだ道は、倖に移植を受けさせ、妻に生きる望みをつなぐことだった。その上美佳との事も、そのままにして。
 
 倖の移植は成功した。一年たった今、倖はずいぶん回復した。外出が出来るまでになり、直人の不倫などなかったかのように妻も元気になった。
 しかし、直人は思っていた。自分は神に背を向け、悪魔に心を売ったのだ。それも二度も。そして、美佳にはそのことを黙って、雅治に移植を受けさせた。本当は私自身が悪魔なのかも知れないと。

「先生? 大丈夫?」
 直人はドキッとした。そう質問した雅治の顔が、倖にそっくりだったのだ。
 倖と雅治は義姉弟なのだから当たり前のことなのだが。

 そして、二人のドナーもまた、姉弟なのだ。なんという巡り合わせなのだろう。改めてそう考えると、また自責の念にかられ、自分のした事への恐怖が襲ってきた。
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