連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第5章 [《第5章》 第4章が2回入力したので、この章は無料です。
「その前に、僕のドナーの事を、先生は詳しく知っていますか?」
直人は何と答えれば良いのか分からなかった。しかし、今は知らない事で通さなければならないと思った。
「いや、知らないんだ」
 雅治は、教えてもらえない事は覚悟していたが、気持ちが焦っていた。

「そうですよね。じゃあ確認する事は出来ないんだ。名前も……」
「そうだね。でも、その夢の中の少年には、名前まであるんだね」
 直人は聞きたくなかった。聞いてしまえば、自分が想像できない領域に足を踏み入れる事になりそうで怖かったのだ。

「ええ、あります」
 雅治は、少し直人の様子が変なことに気づいていた。だから余計に話してみたかった。
「パックス……。パックスって言うんです。そして、彼には姉さんがいる。その名前はユンカ」
 
 雅治は、直人の様子を厳しく観察していた。きっと何か知っているに違いないと確信した。

 直人は恐怖で立ちすくんだ。今一歩踏み出せば、きっとめまいを起こすに違いなかった。
 頭の中が真っ白になり、何も考えられなかった。どう答えたらよいのか、どんな顔をしたらよいのか全くわけが分からなくなっていた。
 
 直人は焦った。いつも沈着冷静な自分が、この時ばかりは動揺していた。どんなに難しい手術でも、麻酔医は沈着冷静でいなければならない。大量出血で、執刀医が動揺しても、直人はいつも冷静だった。
 その直人が今、17歳の、それも自分の息子を前に、何も言えず立ち尽くすほかにはなかったのだ。

(とりあえず、この場を脱しなければならない)

 直人はただそれだけを考えていた。口の中がからからに乾いていた。
 今話し始めたら、雅治に何かを悟られてしまう。

 しかし、そんなことはどうでもよかった。というより、どうしようもなかった。
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