連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第5章 [《第5章》 第4章が2回入力したので、この章は無料です。
 雅治の母美佳はロビーの椅子でうとうとしていた。
 

 彼女は歩いていた。何も考えられなかった。
 大切に育ててきた娘と息子が行方不明になってから、毎日が虚しかった。何もしたくないし、人にも会いたくなかった。人から同情されることも極端に嫌った。あんなに沢山いた友達も、一人ずつ減って行った。
 
 みんなが心配してくれていることは、痛いほど分かっていたが、素直になれなかったのだ。

『少しはご飯を食べないと、身体をこわすわよ』と友達に言われても、素直にありがとうが言えなかった。身体を壊して、早く死んでしまいたいと思った。
 しかし、マイラは死ぬ事も出来なかったのだ。自分が死んでしまったら、ユンカやパックスの帰ってくる場所がなくなる。
 
 八方ふさがりのまま、時だけがいたずらに過ぎて行った。
 この頃は、家にいるのも辛かった。子どもたちの思い出で一杯の部屋にいると、よけいに寂しさが募って来る。
 それでも仕事に出かけなければいけなかった。仕事をしなければ、生きていけない。辛い現実がマイラを苦しめた。

(いったい私が何をしたというのか。主人が事故で死んでから、私は子どもたちの為に必死で働いた)

 ユンカは勉強が好きではなかったから、ハイスクールを卒業した後、近くのサファリパークで動物たちの飼育係をしていた。だが、パックスは勉強が好きで、将来法律家をめざしていた。この差別社会をどうにかして変えていくのだといつも言っていた。
 
 白人は、ほとんど何をしても許された。時には黒人が白人の身代わりにさせられて、刑務所に入れられた。パックスはそんな社会が許せずに、大きくなったら法律家になって、差別に苦しむ人たちを、救済するのだと言っていた。

「ああパックス……あんなにやさしくて正義感に富んだ息子。いったいどこに行ってしまったの。ユンカ……毎日帰ってきたら動物たちの話ばかり。さぞかし動物たちを愛していたのでしょうね。もう二度と会えないのかもしれない。もう、生きていないのかもしれない。何てことなのかしら。私の作ったカレーが、大好きだった大切な子どもたち。何処かで生きていて、ちゃんと食事をしているのかしら。お腹をすかしていないかしら……ああ、神様……」
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