連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
連立の命(れんりのいのち) 第1章 プロローグ
( それなのに……。こんな事をしてはいられない。きっと又、母さんはないているに違いない)
彼はそっと目を開けてみた。
煌々と眩しいライト。
雅治は慌てて目を閉じた。
意を決し、もう一度そっと目を開けて見た。
今度はさっきほどまぶしくはなかった。
目だけ動かして辺りを確認してみたが、どうやら母は居ないようである。
忙しく動き回るピンクのユニホームは看護師であろうか。
雅治は動かない様に手足をベッドに繋がれていた。口には何か噛まされ、気管にはチューブが入れられ、その先は器械に接続されていた。
手術前に、何に使うのだろうと思っていたあの偉そうな器械は、人工呼吸器だった。
少し下に目をやると、薄い綿の寝巻きの下から左右に太い管が出ている。管は赤い色をしている。いや、管が赤い色をしているのではなくて、赤い液体が管を伝わってベッドの下方へ流れ出しているのだ。それは雅治の血液であった。
そして、赤と黒と黄色の細いコード。これも彼の胸の辺りから隣のモニターに繋がって、ピッピッと音を立てている。
どうやら雅治の新しい心臓の鼓動らしかった。
しっかりしたリズムだ。まるでベートーベンの第九の様に力強いが、何故か不安と緊張を醸し出した。
そして両腕にはz2本の点滴チューブ。その先にはたくさんのコックのついたボードがあり、そこからさらに複雑に何本ものチューブが注射器に繋がれている。
まだ麻酔が効いているから痛みはないが、雅治は見ているうちに気分が悪くなってきた。
その上自分で呼吸しようとしても、人工呼吸器の音がブーブーと乱れ、逆に呼吸が苦しくなる。
それを繰り返しているうちに、とうとうアラームが鳴り出した。
「先生、ファイティングを起こしています。覚醒した様てです」
「やあ、お帰り雅治君。気分はどうだい。まだ麻酔が効いてるから、頭がぼーっとしているだろうけど、ここまできたら大丈夫。手術は成功したよ。良かったね」
手術が始まる前、温かい温もりを送り続けてくれていた男の顔が、雅治の顔を覗き込んだ。
(やっと終わった)
彼は安堵し、再び眠りについた。
4
最初 前へ 1234567 次へ 最後
ページへ 
TOP