連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第13章 《第13章》 最終章
 新庄は、どうしても、最後に伝えたいことがあった。

「日本には、『連立(れんり)の枝(えだ)』という言い伝えがあります。これは、二本の木の枝が長い間触れ合っていると、その枝はお互いを支え合うように寄り添うようになります。そして、さらに時間の経過とともに、その枝はまるで一本の枝のように融合するそうです。まさに、移植はこの『連立の枝』と同じ、『連立(れんり)の命(いのち)』と言えるのではないでしょうか。人は、支え合って本来生きて来ました。しかし、現代は、個人の権利や個人の自由を大切にする風潮があります。それも確かに大切な事です。しかし、もっと大切なものを、私たちは忘れてはいけないのではないでしょうか。今後、どうぞ世界中の一人ひとりの命が、大切にされる地球になりますように……」

 この時、南アフリカ政府には、インターネットを通して世界中の人からメールが送られてきていた。人の命の大切さ、不思議さ、そして相手を思う心の強さ……国や、人種を超えた愛、差別制度のばかばかしさなど、様々な人々から、様々な意見が届いていた。
 雅治は、今後、どの様に移植が世界中で行われていくかは何ともえないが、少なくともこれまでより、ドナーの家族の気持ちは大切にされるに違いと思った。そして、それが、臓器売買などの不正を防ぐ抑止力に繋がる事だろうと。
 
 雅治は、この事実を世界中の人が忘れないために、マリー先生から言われたように、本に残す事にした。

「倖姉さん。書き出しはどういう風にしようか……なかなか考えられないんだ」
「あなたが手術を受ける時、どんな気持ちだったの?」
「不安だった。とにかく不安で仕方なかった。そうだ……」

 その日の空は、灰色の絵の具で塗りつぶしたような雲に蓋をされ、太陽がいつ戻って来るのか心配になるほど暗かった……

 雅治は、その灰色の雲のふたを吹き飛ばすように『神はサイコロを振らない』という、Einsteinの言葉を、まるで呪文のように繰り返していた……
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