連立の命(れんりのいのち)
第13章 《第13章》 最終章
「その通りだ。移植に関し、世界中の人々は他人事だった。移植には、かなりの費用がかかる。それを善意の募金を集め、成功すると愛の力だと絶賛した。確かにそうだ。人々の愛の力に違いない。しかし、臓器はまるで物のような感覚になっていて、そこにドナーの家族はいなかった。家族の悲しみ、その後の苦しみ、それを我々報道関係者が、きちんと伝えるべきだったのだ」
「そうなんだ。そこに問題があったんだ。私たちは、もっとそこに気付くべきだったのだ。寄付が集まった事、寄付をしてくれた人々。もちろんその善意がなければ成り立たないものに違いない。しかし、悲しみのどん底にありながら、息子の、娘の命を捧げてくれたドナーの家族。そして、何よりドナーに、我々は感謝の気持ちを捧げなければいけなかったのだ」
その時、新庄は思わず小部屋のドアを開け、報道陣たちに言った。
「みなさん、今から私たちは、そちらに移動します。私はあなたたちの前で話がしたくなった。私は、あなたたちの真剣なまなざしが、大好きです」
小部屋と広間の交流が始まった。それは、人と人の温もり、心の交流に等しかった。
マイラは、雅治や倖、そして、新庄に心から感謝していた。
マイラは皆の前で言った。
「此処に集まって下さった皆さん。そして、この対談を見てくださっている全世界の皆さん。本当にありがとうございます」
そして、雅治と倖のそばに寄り添い、マイラは言った。
「私は、二人の子どもを失ったと思って来ましたが、本当は、二人子どもが増えたのだと今日気がつきました。移植は、そのあり方を間違えれば、世界中を震撼させる大事件に発展します。しかし、その可能性もまた、無限ではないでしょうか。日本がこの事件をきっかけに発足させた、国家移植倫理検討チームが、世界移植倫理検討チームに発展して行く事を、私は願います。どうぞ、私達家族のことを忘れないでいてください」
そして、新庄がこの対談を締めくくった。
「みなさん。今日は本当にありがとうございました。この対談が、どこまで彼らの言葉を、心を伝える事が出来たか分かりませんが、どうか世界中の移植を待つ人々、そして、ドナーとなってくださる人々の心に、届きますように」
報道関係者から、大きな拍手が巻き起こった。
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