連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
連立の命(れんりのいのち) 第13章 《第13章》 最終章
 それを聞いていた雅治が続けた。

「僕は、だんだんパックスが大好きになりました。そして、こう考えるようになりました。パックスからもらったのは、単に臓器としての心臓だけではない。彼の人生そのものだと。彼の人生を奪ってしまった僕だから、これから後の人生を、パックスと一緒に生きようと考えました」
 新庄は、自分が口をはさんでよいものかどうか分からなかったが、言わずにはおられなかった。

「臓器移植法は、自分には将来がないと諦め、何のために生まれてきたのかと考えてしまっている人たちに、希望の光を与えるものです。実際には移植が出来ずに亡くなってしまった人もいますが、移植を待つことで将来に夢を抱くことも出きます。生きる勇気や生きる目的のようなものを、少なくとも感じることが出来るに違いない。しかし、今回の事件は、移植をじっと待つ人の、そんなささやかな夢をも奪ってしまいました」
 新庄の話を聞き、雅治は再び話し始めた。

「移植をすることは、確かにドナーとなる誰かの大切な命が消えることを待つことです。しかし、それはユンカやパックスの大切な命を受け取った僕たちにとって、単なる命のリレーなどという言葉の上の綺麗事ではありませんでした。移植は、ドナーの人生を丸ごと引き継ぎ、自分がどのように生きるべきなのか、どのように生きれば、ドナーから受け取った大切な命に答えることが出来るのかを、真剣に考え、その後の人生を歩いて行く事だと思います」
 新庄は、ここで彼らの生き方を話すべきだと思った。

「雅治は夢の中で、パックスが弁護士になりたかった事を知りました。南アフリカは、アパルトヘイトという厳しい差別を乗り越える事が出来ました。しかし、現状は全く変わってはいない。パックスは、そんな南アフリカを本当の意味で、差別のない国にしたいと考えていたそうです。彼は、雅治は、その意思を継いで、今法科大学院に行っています。もうじきそこを卒業します」
 マイラは、大きな眼から涙をぽろぽろこぼしながら言った。

「おお、雅治。ありがとう……ありがとう……」
174
最初 前へ 171172173174175176177 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ