連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第13章 《第13章》 最終章
 新庄は、マイラにハンカチーフを渡し、今度は自分が話し始めた。

「私はこの事実を知るまで、移植自体に反対でした。世界中に蔓延しているかもしれない臓器売買組織の可能性や、それに群がる人々……それを考えると許せなかった。移植は、人のものに依存し、エゴに過ぎない。そう思っていました」
 新庄は続けた。

「しかし……」
 新庄は言葉に詰まった。自分の中で整理しているのか、話そうとすると口が歪んでしまう。しばらくその状態が続いた後、彼は静かに覚悟したように話し始めた。

「私は八年前、交通事故を起こしてしまいました……」
 一瞬報道陣の中から、どよめきのようなものが聞かれたが、すぐに静かになった。
「その事故で、私は尊い一人の命を奪ってしまいました。その人は、看護師でした。小さい時に両親を亡くし、辛い思いをしながら、一人で一生懸命弟を育てて来ました。しかし、その弟は、重度の心臓病を抱えていました。移植しか助かる道はなかったのです」
 新庄は、再び嗚咽を我慢できなくなったのか、一瞬沈黙し、ネクタイをギュッと掴んだ。そして、落ち着くとまた話を始めた。

「彼女は『私の心臓を弟に上げてください……』と言い残し、私の腕の中で意識を失いました。その後彼女は脳死判定を受けました。弟さんは、僕にこう言いました。『姉さんの、心まで一緒に移植できればよいのに』と。彼は、失意の中、健気にも姉の意思を受け取る決心をし、彼女の心臓は弟さんに移植されました。今でも不思議なのですが、拒絶反応はほとんどなく、その後彼は、医師になりました」
 その時、報道陣から質問があった。

「新庄は、議員を続けているが、公的職業としての責任はどうしてとらなかったのか?」
 新庄は、一瞬詰まったが、姿勢を正しきちんと答えた。
「はい。言われるとおりです。私は辞職して、田舎に帰ろうとしていました。弟さんに会い、その事を話すと、彼はこう言いました。『日本の国に何か大変なことが起こっているのであれば、あなたはそれを途中でやめてはいけないと思う。姉もきっとそう願っていると思います』そう言ってくれたのです。彼はその時、まだ十八歳でした」

 その姿が、新庄の実直な性格を物語っていると誰もが思った。
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