連立の命(れんりのいのち)
第13章 《第13章》 最終章
「私は、この事件を八年間、ずっと追って来ました。不法な臓器売買はおぞましく、多数の犠牲者を出してしまいました。そして、私はその真相と悪を暴くため、世界中を走り回りました。このような事件を二度と起こさないために。しかし、此処で私は信じられない事実に突きあたったのです」
カメラ越しの新庄は、涙を流しながら話をしていた。そんな新庄の真剣なまなざしと、実直な話口調が、報道陣を始め、全世界の人々に好感を与えていた。
そして、その事を、新庄は知る由もなく話しを続けた。
「ここに、ある一組の家族がいます。マイラ・カイラントと、吉行倖、雅治義姉弟です」
会場を見渡すカメラには、一様に怪訝な表情の報道陣の顔が映し出された。
「この三人は、先日の事件の当事者です……」
会場は、一瞬大きなざわめきに包まれた。新庄は、そのざわめきがおさまるのを静かに待ち、そして話し始めた。
「この親子は悲しみを乗り超え、国境や人種を超えて固い絆で結ばれています。私は、この親子に賭けてみました。信じて下さらないかもしれませんが、今日の対談は打ち合わせが一切ありません」
報道陣は、一瞬ざわめいた。本当かという声も聞かれたが、新庄は続けた。
「本当です。どの様な展開が待っているか私にも分かりません。そのため、報道陣の皆様には、ご迷惑をかける事になりましたが、関係者の気持ちを考え、ゆったりとした気持ちで話せるように、皆さまには別の部屋に入っていただく事になりました。申し訳ありません……」
そして、新庄は、胸に手を当て、大きく深呼吸を二つした。
報道陣には、かなり緊張している新庄の様子に、彼の覚悟のようなものを感じた。
そして、その緊張感はカメラを通して報道陣にも確実に伝わった。
「では、対談を始めて行きたいと思います。マイラ、まず、私から質問してもよいでしょうか」
マイラは、大きく頷いた。
新庄は昨日の昼間、マイラに初めて会った時の言葉がずっと気になっていた。そのため、此処から始めようと決めていた。果たして上手くいのだろうか。
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