連立の命(れんりのいのち)
第12章 《第12章》
「ムンカ、ありがとう。いいのよ。だって、あんな事を言って叫び続けたら、気が変になったって思う方が自然だもの。本当の事を言うとね、自分でも半分は信じられなかったの。だって、真実にしては、あまりにも残酷で悲しいから」
雅治と倖は、黙ってマイラの声を聞いていた。
小さい頃、辛くて泣いた時、しっかり母が抱きしめてくれたことを二人はそれぞれ思い出していた。
どのくらい経ったのだろうか。時間にしたら、本当は1~2分くらいかもしれないが、かなりの時間がたったように感じた。そして、やっと二人を離したマイラは、真っ直ぐに二人の顔を見てこう言った。
「二人とも、なんて可愛い顔をしているの。よく私に顔を見せてちょうだい。遠いところまで会いに来てくれて、本当にありがとう。私、生きていてよかった。本当に良かった」
雅治も倖もそのマイラの言葉が信じられなかった。どんなに責められても、詰られても我慢しようと覚悟してきたのだ。この優しさが、ユンカとパックスのあの優しさを作りだしていたのだと、今改めて二人は感じていた。
「ごめんなさい。僕たちの為に、ユンカもパックスも。会いに来たのが僕たちで本当にごめんなさい。何と言って謝ったらいいのか分りません」
「いいのよ。二人ともいいの。どうしてこんな事になったのかは、夢の中でユンカとパっクスが教えてくれたから。あなたたちがどんな子なのかも、ちゃんと分っている。だって、こんなに遠くまで私に会いに来てくれたんだもの。雅治は、パックスと約束したのでしょう。私にきっと会いに行くって。あなたたちの方が辛い思いをして生きて来たのでしょう。もういいのよ。本当にいいの」
雅治はびっくりした。マイラは自分の名前まで知っていたのだ。パックスが、自分たちの名前まで、大切な母に教えておいてくれたのだ。
雅治はマイラの右手を、倖は左手を、自分たちの心臓にそっと当てた。
何も言わずに、ただそっと優しく手を置いた。
力強い鼓動が、二人の心臓からマイラの手の平を伝わり、全身を優しく包んでいった。 まるで、久しぶりに会った母を気遣うように、その鼓動は、優しく静かに流れて行った。
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