連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第12章 《第12章》
(何故だろう。もしかしたら、さっき子どもたちにパンを上げていた光景を見ていたのかもしれない……)

 そんな事を考えながら歩いていると、雅治が急に立ち止まった。
 雅治はその場所に、異様な懐かしさを感じたのだ。そこには、割れたガラスに『CLOSE』と張り紙がされた見覚えのあるショーウインドウがあった。
 
 そこは夢の中で、パックスと初めて出会った場所だった。
 
 雅治は、そこで無意識にダンスを踊り始めた。クルックルッと何度も回転して上手に踊る雅治を、倖はびっくりして見つめていた。何とリズミカルで、楽しいダンスなのだろう。
 雅治にこんな特技があったのだろうか。いやいやこれは雅治であって雅治ではない。

 音楽もないのにリズミカルなダンスは続いた。
 そのうち路上に居た人たちが、何と雅治にエールを送り始めたのだ。一緒に手を叩き、リズムをとり始めた。まるで懐かしい友達にでも出会ったかのよう……。
 もしかして、雅治の中のパックスが、ふるさとの友人に挨拶しているのかもしれないと、その時倖は思った。

 ひとしきり踊った後、雅治は自分にエールを送ってくれた人たちに手を振り、再び歩き始めた。びっくりしている倖にやっと気付いた雅治は、恥ずかしそうに頭をかいた。

「ごめんね。びっくりしただろう。何故だか急に踊りたくなったんだ。夢の中での出来事が、現実である事を確かめたかったんだ」
 歩きながらそう雅治はそう説明した。

 再び雅治は突然静止した。倖が今度は何だろうと、その視線の先に目を移した。
 そこにはトタン屋根の小さな家がひっそりと建っていた。そこがパックスとユンカの家なのだろうか。二人はゆっくり近づいた。何となく、人が住んでいる気配がなかった。
 窓は閉められ、カーテンもしっかり閉じてあった。
 そっと近づきドアのノブに手を伸ばしてみた。
 ドアのノブは回らなかった。鍵がかかっていた。

 もしかして、もう此処には、二人の母親は住んでいないのだろうか。それとも、単に買い物に行っているだけなのだろうか。
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