連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
連立の命(れんりのいのち) 第11章 《第11章》
 その夜、倖はユンカの夢を見た。ユンカは育児放棄されてしまったライオンの赤ちゃんにミルクをあげていた。

 二匹の赤ちゃんライオンは弱っていた。なかなか哺乳瓶からミルクを飲まないのだ。
 本来なら、お母さんの温かい毛皮に包まれて、ゆっくり眠れるはずなのに。二匹はバスタオルに包まれて眠っているのだ。ユンカはそれがかわいそうでならなかった。お母さんに会わせてあげたい。そればかり考えていた。

 しかし、一度人間のにおいが付いてしまった赤ちゃんライオンを、たとえ母親に出会わせてあげたとしても、母親が受け入れるとは限らない。ユンカにはその事もよくわかっていた。それでも一度でいいから、母親のぬくもりを、二匹に味あわせてやりたかったのだ。

 そして、ユンカはその時傷ついて倒れていた雌ライオンが、第3セクターの折の中に居ることを思い出した。

(うまくいかないかもしれない)
下手をすれば食べられてしまうかもしれないが、このままでは確実に二匹は死んでしまう。ここは、第三セクターのライオンの母性愛に賭けてみるしかないとユンカは決心した。

「二匹の赤ちゃんたち、出来るだけかわいい顔で近付くのよ。かわいい声で甘えるの。貴方達の行動で、あの雌ライオンが本能に目覚めるかもしれない。そうすれば、貴方達は生きられる。頑張るのよ」

 ユンカは檻の外に、二匹の赤ちゃんライオンを置いた。そして自分は近くの木の陰に隠れて見ていた。
 二匹はまるで猫のように、ミャアミャアと甘えて泣いていた。しかし、雌ライオンは檻から出ようとはしなかった。それでも二匹は諦めずに泣いた。

 ユンカはその姿を見て、自然の命の力強さを感じた。あの弱々しい小さな体の、どこにあんな強さがあるのだろう。

 1時間ほどして、雌ライオンが檻からのそのそ出てきた。ユンカは緊張した。喜んではいられない。爪で引っ掻かれたら二匹の小さな命はあっという間に断たれてしまう。

 ユンカはいつでも飛びだせる準備をしながら見守っていた。
 雌ライオンの匂いがしたのか、二匹はよちよちと檻に近付いて行った。雌ライオンは、じっと二匹を見ていた。そして次の瞬間、ユンカは奇跡を見た。

 近づいてきた二匹の赤ちゃんライオンの居る方に、雌ライオンも近づいて行ったのだ。
141
最初 前へ 138139140141142143144 次へ 最後
ページへ 
TOP