連立の命(れんりのいのち)
第11章 《第11章》
「義姉さん、何か変わったことはないかい?」
突然の電話に、倖は驚いた。
「何かしら……今のところは何もないけど」
「僕、今日パックスとユンカと、二人の母さんの夢を見たんだ。きっと何かを僕に知らせようとしているのだと思う」
「あなたはずっとパックスの夢を見てきたのだから、本当に何かあったのかもしれない」
「僕、出来ればアフリカに行ってみたいんだ。大学院の卒論の方は余裕があるし、休みを10日ほど取れば、何とかパックスのお母さんを見つけ出せるんじゃないかと思うんだ」
倖は、自分のスケジュール帳を確認した。
「そうね……雅治君、私も行ってもいいかしら……」
「勿論。悠一君は忙しいんだろうなあ。インターンが始まるころだから、10日も休めないだろうなあ」
倖は、久しぶりに悠一の声が聞きたくなった。
「私から聞いてみましょうか?」
「そうだなあ……いや、僕が連絡してみるよ。聞きたいこともあるし」
倖は、自分が連絡したかったが、ここは雅治に任せることにした。
「そうね。じゃあ、私も休みを取る関係から、出来れば日程が決まったら早めに知らせてもらえれば助かるんだけど」
「分かった。悠一君の様子を聞いて、決まればすぐに連絡するから、待っていて!」
「じゃあ、係長さんに話しておくわね」
雅治はすぐに悠一に連絡を入れた。パックスのお母さんに何かあったのなら、すぐに行かなければいけないと思っていた。何をおいても、たとえ大学院の卒業を棒に振ったとしても行かなければいけない。
ただ、悠一は今忙しくて、なかなか電話に出られない。いつも返事が来るのは二日ほど後になる。
『悪い。忙しくて電話できなかった』最近はそんなやり取りの繰り返しだった。
しかし、今日は違った。悠一は意に反して、すぐに電話に出てくれた。雅治からしてみれば、悠一が一回で電話に出てくれるなんて奇跡に近かった。
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