連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第10章 《第10章》
 その間、新庄は臓器移植法の法律上の抜け穴を是正するために奔走していた。

 臓器移植チームを結成するに当たり、それを国家資格とするための法律を新たに設けなければいけなかった。この移植チームには、医師と移植カウンセラー、心理療法士、弁護士の四職種が絡んでくる。このチームに恣意を挟む余地がないようにしなければならなかったのだ。

 どのようにして移植チームのメンバーを選定するのか。どのようにすれば、そこに人の恣意を挟まずにメンバーを選定できるのか……それは、かなり難しい作業であった。

 新庄は、昔母から聞いた話を思い出した。
 幼い新庄がナイチンゲールの伝記を読んでいた時、母は伝記には書いていない事実を新庄に話して聞かせてくれた。

 ナイチンゲールは偉大な看護師であったが、看護師を国家試験で選定することに亡くなるまで反対していた。

その時の新庄には、母の言う事が理解出来なかったが、今になって母が彼に言いたかった事が理解できるような気がしていた。

 医師や看護師は、患者の治療や看護をするにあたり、能力上の適性のほかに、人間としての適性があるという事をナイチンゲールは言いたかったに違いない。
 それはペーパー試験で計れるものではなく、その人本人を見極めなければならないということだろうか。
 ナイチンゲールはそれを亡くなるまで主張したため、晩年はさびしくその生涯を閉じた。しかし、今の医師や看護師不足の中で、彼女の言うように、一人ひとりの人間の適性を図ることは不可能に近い。

 しかし、移植チームはすでにペーパー試験でその資格を得た者の中から選定するのである。ナイチンゲールの言うペーパー試験では見抜けない人間性を含めることが可能ではないのか。可能というより、そうしなければならないという事を、新庄はこの時に確信したのだ。

 そして新庄の心の中で、何かが動いた。

 新庄は今、ナイチンゲールの自分の地位や名声を捨ててでも、信念を貫き通す勇気がほしいと思った。いや、その勇気を持たなければ、この難関を突破することが出来ないことを新庄自身が一番分かっていた。

 議員の中で孤立してしまう事を覚悟の上で、次の国会で法案を提出することを、新庄ここの時決心した。
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