連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
連立の命(れんりのいのち) 第10章 《第10章》
 雅治と倖は、そのことも悲しかった。

 臓器移植法は、自分には将来がないと諦め、何のために生まれてきたのかと考えてしまっていた人たちに、希望の光を与えた。実際には移植が出来ずに亡くなってしまった人も、移植を待つことで将来に夢を抱くことが出きた。生きる勇気や、生きる目的のようなものを、少なくとも感じることが出来たに違いない。

 しかし、今回の事件は、移植をじっと待つ人の、そんなささやかな夢をも奪ってしまったのだ。移植をすることは、確かにドナーとなる誰かの大切な命が消えることを待つことに等しい。
 しかし、それはユンカやパックスの大切な命を受け取った雅治や倖には、単なる命のリレーと言う、言葉の上の綺麗事ではなかった。

 命のリレーというより、ドナーの人生を丸ごと引き継ぎ、自分がどのように生きるべきなのか、どのように生きればドナーから受け取った大切な命にこたえることが出来るのかを、真剣に考え、その後の人生を歩いて行く事なのだ。

 移植を受ける前は、確かに自分の夢や希望に満ちていた。しかし、その段階でドナーの人生を考える余裕などあっただろうか。
 ありがたいと思ってはいたが、早くドナーが見つかることを望んでいた。それが人の死を待つことであるという矛盾を感じながらも、その時を待っていた。

 亡くなって焼かれてしまう臓器なら、自分が貰って何故悪いのだろう。そう考えることで、自分の気持ちをポジティブにしていたのかもしれない。

 雅治は、マスコミの前で自分が違法な臓器を受け取った本人であると言いたかった。確かに許されないことをした両親の息子であると言いたかった。そこに隠された沢山の人々の複雑な気持ちを訴えたかったのだ。

 しかし、それは新庄に止められた。というより、それが無意味なことだという事を、雅治自身が一番よく知っていた。
 自分がマスコミの前に出たとしても、真実を理解してもらう事は無理だろうし、今の時点では、自分や倖や両親たちを正当化してしまうことにつながってしまう。言い訳にしかならない。

 どうする事も出来ないまま、時は過ぎて行った。
131
最初 前へ 128129130131132133134 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ