連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第1章 プロローグ
気がつくと、パックスは冷たいベッドに横たわっていた。
眩しくて目が開けられなかった。
手足を動かそうとしたが、縛られている訳でもないのに動かせない。
急に恐怖が彼を襲った。パックスは、少しでもあの男の優しさを信じた自分が悲しかった。
 
あの美味しい肉も、優しい味噌汁も、オレンジジュースも……
もっと早く気づくべきだったのだ。きっと眠らされて、検査されていたに違いない。
いや、たとえ気づいていたとしても、パックスに何が出来たというのだろうか。
パックスは、もう一度目を開けてみた。今度は、さっきほど眩しくはなかった。

パックスの周りでは、緑色の大きなマスクとガウンに身を包んだ人たちが、忙しそうに動き回っていた。
声を出そうにも声も出なかった。

ガチャガチャという器械音。相変わらず眩しいライト。タイル張りの冷たい部屋。
どれもこれもパックスを不安にさせた。
温かいものなんて何も無かった。
いったいこれから何が始まるのか。
恐怖でいっぱいになった。

いつも温かく包んでくれた母の手に、もう一度触れたいとパックスは心から思った。
(怖いよ、母さん。助けて……)
 
緑色のガウンと、マスク、帽子……
パックスは腕に注射をされた。
意識はしっかりしているのに、腕を動かして拒もうとしても、全く身体を動かす事が出来なかった。

(どうなっているのだろう。僕はどうなるのだろう)

だんだん不安は嵐のように強くなり、呼吸が苦しくなってきた。
そして、やっとの思いでパックスに注射していたその人の目をみた。

何と言う事だろう……
それは、あの男の目だった。

パックスは一生懸命その男に訴えた。いや、目を通して、心で叫んだのだ。
『Help me……Help me……』
その人は、申し訳なさそうに瞼を伏せ、首を振った。
そしてその男は、パックスの前に二度と姿を現さなかった。

パックスは朦朧とする意識の中で、ふと横に目をやった。
そこには、パックスと同じくらいの青年が、もう一つのベッドに横たわっていた。
どういうことなのか、パックスには理解出来なかった。

意識は遠のき、悲しみとともに、パックスは眠りの渦の中に呑みこまれていった。
完全に意識が無くなるその瞬間、パックスは大声で叫んだ。
声にならない心の声で……

『I want to live more……good by mama……』
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