連立の命(れんりのいのち)
第9章 [《第9章》
「僕もそう思うんだ。パックスは、僕が拒絶反応で苦しんでいる時に、夢の中でこう言ったんだ。『死ぬな、死ぬんじゃないぞ。僕の母さんに会いに行くんだ。それが君の償いだ』って」
悠一も、やっと言葉を見つけたように話し始めた。
「償いか……パックスは、お母さんの事が心配でたまらなかったんだろうな。雅治君にはその気持ちが、きっと分かってもらえると思ったんだろう」
倖はうつむいたまま何かをじっと考えていたが、やっと顔をあげると雅治に向ってきっぱりとこう言った。
「雅治君。ユンカとパックスのお母さんに会いに行って、事の次第をきちんと説明してあ謝りましょう。そして、私たちに出来る事の全てを、二人のお母さんのためにしてあげましょう」
雅治は、自分と同じことを考えている義姉に、しっかりと頷いた。
「姉さん、実は僕も同じことを考えていたんだ。ただ、何が一番良い方法なのかは分からない。ユンカとパックスの母親を、このままそっとしておいた方がいいのかもしれない。彼女が真実を知ってしまえば、生きる気力を失ってしまうかもしれない。でも、一つだけ確かな事は、真実を知らなければ、ユンカとパックスのお母さんは、きっとこの先前へは進めないだろうってこと。いつも、今の悲しい現状に、踏みとどまっていなければならない」
倖は、じっと雅治を見つめていた。
「悲しい現実を知ることは、死ぬより辛いだろうけど、きっと乗り越えられる。だって、こんなに素晴らしい姉弟のお母さんなんだもの」
悠一も、二人と同じ気持ちだった。
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