連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第9章 [《第9章》 
「自分の?」
「そう、自分のために。それまでの僕は、母さんのために生きて来た。五歳の時からずっと母さんが喜ぶ事だけを考えて生きて来たんだ。自分の夢や希望なんて望めなかったから」
 悠一は頷きながらじっと聞いていた。
 そして、悠一も倖に言い聞かせるように話出した。

「僕も同じだった。自分がいなければ姉さんは幸せになれるだろうと、ずっと思って生きて来たんだ。自分の夢や希望なんて叶えられないと思っていたから、考えようとしなかった。考えれば考えるだけ、辛くて悲しくなるだけだったから」
 倖は、悠一からそんな話を聞くのは初めてであった。そして、倖は言った。

「私も同じ。移植前は、じっとベッドにいるだけでも苦しかったの。何のために生きているのだろう。何のために自分は生まれてきたのだろうって、毎日思うようになっていた。元気になって、移植コーディネーターになった後も、精神的な苦痛からは逃れられなかった」
 三人は同じ境遇だった事に、この時改めて気付かされた。

 そして、世界中に自分たちと同じ境遇の人がたくさんいることを確認し合った。
 雅治は、話を前に進めるために核心にせまる話を始めた。

「義姉さん。びっくりしないでね。義姉さんの夢の中の女の人は、名前をユンカって言っていなかったかい?」
 突然の質問に、倖はびっくりして大きな目を見開いてじっと雅治を見つめた。

「そうなんだね。やっぱり……」
 倖は、驚きのあまり息をのみこみ、そして絞り出すように言った。

「雅治君、どうして名前を知っているの……」
 雅治は、これ以上倖が驚かないように優しく話しかけた。

「倖義姉さん、いいかい。ユンカと僕の夢に出てくるパックスは、実は姉弟なんだ。彼らは南アフリカから連れて来られたんだ。事件の事は聴いているでしょう?」
「ええ……でも、詳しい事はきいていない。ドナーの事は、事件が発覚しても、やはり通常と同じで本人にはほとんど教えてはもらえないから」
 
 そう言ったまま、倖は黙り込んでしまった。
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