連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第9章 [《第9章》 
「倖さんも、夢を見たのだろうか。聞いたことがないけど……」
「さあ……分からない。僕も義姉さんに聞いたことがないんだ。でも、これだけ憔悴しているのだから、きっと夢は見ていないと思う……」
 悠一は少し考えていたが、思い出したように言った。

「そう言えば、実は僕もこの間姉さんの夢を見たんだ。姉さんはカレーの事をしきりに言っていた。姉さんは、カレーが大好きだったはずなのに、いつからだっただろうか、ぱったりとカレーを食べなくなったんだ。夢でもその事を言っていた。僕には意味が分らなかったから単なる夢の事だと今まで気にしていなかったんだ」
「カレーは、パックスの大好物だったんだ。パックスの母さんが作るチキンカレーは、とっても美味しかったようだ。日本で言う、おふくろの味か……パックスが大好きだったのだから、姉であるユンカもきっと好物だったんだろう」
「それが姉さんと、どんな風に関係してくるのだろうか」
「分からないけど、きっと志保さんは、悠一君に教えてくれると思うよ」
 悠一は、じっと雅治を見つめていたが呟くように言った。

「心臓は、記憶しているのだろうか。人の人生を……」
 悠一は、丸ごと志保の心まで自分に移植されていればいいと思った。
「さあ、僕にも分らない。人間の脳は未知な部分が多いから、何か心臓と関係していることもあるかも知れない。心配ごとがあるとドキドキするし胸に手を当てる」
 雅治は、胸に手を当てパックスの事を思った。

「そうだね。『心』って言葉は日本語だけではなく、『Hert』って英語にも、世界中の原語に同じ意味の言葉があるよね。心臓には心ってイメージがあるから、心臓移植はその人の心まで移植されるような……」

 二人は不思議な気分になっていた。雅治は、パックスの心を大切にしたいと思っていたし、悠一は志保にいつも守られているような気がして、優しい気持ちになることができた。
 二人にとっての今は、辛い事ばかりであったが、不思議な事に、いつも何かに癒されているような気がしていた。それが何故なのか、今この時二人には理解できたように思えた。

 きっと倖も、辛い毎日を送っているに違いなかった。しかし、今の二人の気持ちを倖に伝える事で、少しは倖が楽になるのではないかと思えた。
 悠一は、少し倖に会うのが楽になった。
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