連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第9章 [《第9章》 
「悠一君には信じられないかもしれないけれど、僕は自分のドナーを本当は知っているだ。義姉さんのドナーも」
「どう言う事?」
「僕と義姉さんのドナーは、南アフリカから別々に誘拐されてきた姉弟なんだ。名前パックスとユンカ。ユンカは動物が好きで、サファリパークで働いていた。パックスはまだハイスクールの学生で、将来差別制度を根本的に解決したいと法律家を夢見ていた。それなのに、二人は立花の私欲と、世界的な臓器売買組織の手にかかってドナーにされてしまったんだ」
 悠一はじっと雅治を見つめていた。膝の上で拳を握りしめながら。

「それは、その夢は真実なの?」
「たぶん、確実に真実だと思う。僕の話を直人先生と志保さんに話したんだ」
 悠一はびっくりした。

「姉さんにも?」
「そう……二人とも、ただ事でない反応だった。志保さんは動揺して立ち尽くしていたし、どんな時にも冷静さを失わないはずの直人先生も、死んだように呆然としていた。名前も真実だった。パックスは直人先生から、ユンカは志保さんから確認できた」
「まさかそんな事が……」
 悠一は、信じられないというように絶句した。

「それに、今でも時々感じるんだ。自分が自分でないように感じる時がある。僕は右利きなのに、左手を器用に使えるようになった。パックスは左利きなんだ。毎日パックスの夢を見ていた時、僕自身がパックスに乗っ取られそうに感じたことがあったんだ。夢の中で、パックスの日常がインプットされて行くんだ」
 雅治は、じっと瞬きもせず、自分を見つめている悠一を気遣いながら話を続けた。

「でも、ある時からぱったりと夢を見なくなった。パックスは、本当にやさしい青年だったんだと思う。誘拐した人への恨みはあったに違いないけど、僕を恨んではいなかった。苦しんでいる僕に、夢で希望を与えてくれたんだ。ただ、お母さんにだけは会いに行ってほしかったに違いない。それが僕には良く分かるんだ」

 悠一は、雅治が嘘をつく事はないと思ったが、信じるにはあまりにも不思議な話だった。
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