連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第9章 [《第9章》 
「僕の母さんは、直人先生が起訴されたことに加えて義姉さんが僕と同じように移植を受けていた事を、自分だけ聞かされていなかった事にもショックだったんだと思う。だって、涼子おばさんは僕が手術を受けた事を知っていたから」

 実際その通りだった。美佳は、涼子が直人から聞かされていた事を自分が知らなかった事にもショックを受けていた。
 しかし、一番苦しい思いをしているのは、一体誰だというのだろうか。

 倖と雅治は、自分の体の中にある心臓が、脳死ではない人の中から取り出されたものだという事を、知ってしまったのである。いつも心臓の鼓動を意識している訳ではないが、ふと自分に戻った時、必ず心臓の鼓動を意識してしまう。
 出来る事なら、今すぐ自分の中から心臓を取り出し、その人に返してあげたいと思う。やりたいことも出来なかった事も沢山あったに違いなかった。

 しかし、雅治は最近考えるようになっていた。自分の心臓はパックスの物だ。
 そして、倖の心臓はユンカの。パックスやユンカに願いがあったのなら、二人の願いを叶えられないだろうかと。

 その時ふと、移植後の拒絶反応で絶望している時、夢の中で言われた言葉を思い出した。
『死ぬな。死ぬんじゃないぞ。僕の母さんに会いに行くんだ。それが君の僕に対する償だ』
 
 あれは、パックスの言葉だったに違いない。パックスは、お母さんの事をいつも心配していた。そのパックスが、元気になったら母さんに会いに行ってくれと、夢の中で僕に伝ええていたのだ。どうなったかの所在も分からず、毎日苦しんで心配している母親の事が、パックスは心配で仕方がなかったのだろう。
 苦労して自分を育ててくれた母に、何も出来ないまま死んでいくことに、どれほどの無念さを感じていた事だろうか。

「悠一君は信じてくれる?」
「えっ?」
「テレパシーとか正夢とか……」
 突然の雅治の言葉に、悠一はびっくりした。

「どうしたの? 急に」
「どこから話したらいいのか分からないんだけど、僕がずっと移植後の拒絶反応で生死をさまよっていた時、夢を見続けていたんだ。その夢は毎日続くんだ。まるで小説を読んでいるかのように、次の日も、その次の日も……」

 悠一は、雅治をじっと見つめていた。
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