連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第1章 プロローグ
パックスは汚れた洋服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
気持ち良かった。
人間は、なんと強い生き物なのだろう。
こんな状況の中でも、シャワーを浴びて、気持ち良いと感じられるのだ。

暫くこのまま時間がとまればよいとパックスは思った。
今この瞬間だけは、全ての事を忘れられた。温かいシャワーの湯は、疲れて傷ついたパックスの心と体を、汚れと一緒に洗い流してくれるようだった。

浴室が石鹸の香りに包まれ、本当に天国のように感じられた。
シャンプーで、チリチリの母譲りの髪の毛を洗い、シャワーのコックをひねった。
バスタブには湯がきちんと張られていた。
手を浸けて温度をみると、心地よい温かさだった。
あの男の優しさが、またパックスの心を温かくさせた。
パックスは思わず声をあげて泣き出しそうになった。

バスタブに浸かる習慣の無いパックスは、少し考えた挙句、湯に身を沈める事にした。
何故、そんな気持ちになれたのか自分でも不思議だった。
(あの男の優しさに答えるべきだ)
その時のパックスは、そう思ったのかもしれない。
恐る恐るバスタブをまたぎ、湯に足を入れた。
そして、座った……
初めての体感だった。
天国にでも行ったように、心が癒された。 

そんなひと時も、いつまで続けるわけにもいかず、心地よい湯と決別してバスタブから上がった。
ゾクッとする静けさと寒気を感じた。
パックスが着替えを済ませて、傍らの椅子に腰かけていると、ガチャッと鍵が開けられ、さっきの男が入って来た。

「スッキリしたかい?」
「Yes……」

パックスは再び目隠しをされて、さっきの部屋へ戻された。

「喉が渇いただろう。ここにオレンジジュースを置いておくからね」
その男は、オレンジジュースをテーブルにそっと置き、出て行った。
後姿が何となくうなだれていて、力がなかった。

(僕をここへ連れて来た男たちと、あの男の人は全く雰囲気が違っている。これから自分はいったいどうなるのか……)

とても悪人とは思えないその男の様子は、逆にパックスの疑問と不安を募らせた。
いや、この時パックスは、自分の運命を感じていたのかもしれない。

パックスは男が言うように、喉が異常に渇いていた。その渇いた喉を、オレンジジュースで一気に潤した。
「うまい。なんて美味いのだろう……」
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