連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第9章 [《第9章》 
「今のところは、はっきりした証拠がない。でも、確かな事のようです。怖い事です…」
 新庄はその先も話したかったが、悠一の顔が真っ青だったため、びっくりして止めた。
「悠一君、ごめんなさい……自分が情けない……。こんな事話すなんて、なんてデリカシ
ーがないんだ。本当に申し訳ない」
「いいえ、大丈夫。今度ゆっくり聞かせてもらえませんか? 僕も関係ない事ではないの
で、話が聞きたい。自分の身体が元気であったら、移植医療に関係のある職業に就きたい
と思っていたのです。でも、僕は身体がこんなだから、ずっと諦めていた。自分の将来の
事なんて、考えてはいけないと思っていたんです」

 新庄は、初めて生の患者の声を聞いた。そして、衝撃を受けた。
 今まで自分は、国民の代表として悪を暴くことだけを考え、移植を待つ患者の声に、耳
を傾けた事があっただろうか。一生懸命国民のために仕事をしていると思っていた自分が恥ずかしくなった。

「悠一君。元気になったら、たくさん話そう。その時に移植の事は話す事にしよう」
「そうですね。本当に無念な姉の気持ちを思ってくれるのなら、新庄さんに頑張ってほし
いと思います」
 悠一のその言葉を聞いた新庄は、ゆっくりと自分の考えを話しだした。

「悠一君……本当のところ、僕はもう議員を辞めて故郷へ帰ろうかと思っているんだ。こ
んな事になって、僕には国民の代表でいる資格なんかないと思っている……」
 悠一はびっくりした。自分たちのために、この人は議員を辞めるのか。そんな事を考え
ないでほしいと、この時悠一は即座に思った。何故か悠一は、この実直な新庄の事が好き
であった。

「新庄さん。僕は反対です。日本の国に何か大変なことが起こっているのであれば、あな
たは途中でやめてはいけないと思う。姉もきっとそう願っていると思います」

 新庄は、来た時とは別人のように、キラキラした目で悠一をじっと見つめていた。
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