連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第9章 [《第9章》 
「手術前の検査を受けている時に、おかしいと思ったのです。移植手術には費用がかなりかかる。姉にその費用を出せるはずがない。姉の保険金かと思ったのですが、そうではなかった。そう考えると、貴方しかいないのかと……」

「勝手な事をして申し訳ありません。岬志保さんは、僕の腕の中で意識を失われた。最後の希望をどうしても叶えてあげたかったのです。自分より貴方の事を大切に思われている事は、その時点で分かりました。ただ、間違えないでください。心から、お姉さまの望みを叶えてあげたかったのです。同情とか、罪滅ぼしとか、保障とか、そのような気持からではありません……」
 悠一は泣いていた。涙が止まらなかった。新庄の誠実さが、痛いほど伝わってきた。

「新庄さん。今は頑張ろうと思っています。姉の分も一生懸命頑張ろうと。どんなに辛い事があっても頑張って生きて行こうと思っています。姉が僕にくれた命を大切にしたいと。ただ、本当に費用は大丈夫ですか? 移植費用までは、保険からは下りないのでしょう?」
「それは悠一君が心配しなくても大丈夫です」

 新庄は志保と悠一の、これまでの人生を思った。
 新庄が18歳の時、お金の心配などした事があっただろうか。ましてや、他人のお金の心配など考えも及ばなかったことに違いない。
 
 新庄は、静かに一枚の名刺を差し出した。そこには『衆議院議員 新庄健太』と書いて
あった。
 悠一は改めて新庄の顔を見た。いくら議員さんであっても、保険以外のお金を出してま
で人を助けるものなのだろうか。

「新庄さんは、議員さんなのですか……」
「最初に名刺を出すべきだと思ったのですが、肩書で悠一君に先入観を持ってほしくなか
ったのです。実は、僕は日本の移植医療に関心があって、今水面下で色々動いているので
す」
 悠一は驚いた。こんな偶然もあるのだと。

「日本の移植医療は、二〇〇九年の移植法が改正された後も、伸び悩んでいます。実のところ、お金持ちの間では、その後大変な事が起こっているようなのです」
「大変な事?」
「大きな声ではいえませんが、外国から連れて来られた子ども達がドナーになっている可
能性が出てきた。生きたまま連れて来られているようなんです」

 悠一は声も出なかった。何てことなのだろう。
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