連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
価格:章別決済
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第9章 [《第9章》 
 悠一は、そこに立ちつくす新庄に椅子をすすめた。新庄は躊躇いながらも、悠一に一礼し、椅子に腰かけた。
 悠一は、ゆっくりと話し始めた。
「姉は、飛び出したのですか?」
 新庄は、悠一の目をまっすぐに見ながら、しかし、辛そうに話し始めた。

「それが、はっきり分からないのです。信号は赤から青に変わる直前でした。お姉さまは青に変わったと同時に、横断歩道を渡られたのだと思います。ただ…」
「ただ……?」
「たぶん何か考え事をされていたのではないかと思うのです。一瞬ですが、横断歩道に出
たお姉さまは、天を仰いでおられました。倒れたお姉さまに私が声をかけると『私が死ん
だら悠一に私の心臓をあげてください』と言い残し、意識を失われました」

 悠一はたまらなかった。痛かっただろうに、無念だっただろうに。最後の最後まで悠一を気遣う志保の気持ちが痛いほど分かった。
 気が付くと、新庄は膝の上で拳を握り、ボロボロ涙をこぼしていた。悠一はそんな新庄
を、これ以上責める事は出来ないと思った。

「新庄さん、どうか顔をあげてください。姉は、いま僕の胸の中で生きています。ほら、この音を聴いてください。ピッピッってこの音は、姉さんの心臓の鼓動です」
 新庄はさらに涙を流し続け、握りこぶしを膝に押し付けながら、肩を震わせていた。

「申し訳ない。本当にごめんなさい……」
「僕はそんなつもりで言ったのではありません。新庄さんに姉が最後に言った言葉通り、
姉は僕に心臓をくれました。優しかった姉さんは、いつも僕と一緒にいます。新庄さんが
赤信号で突っ込んだとか、飲酒運転をしていたのでは無いのだから、もう、そんなに自分
を責めることはやめてください。きっと姉もそう云うと思います」
「悠一君……」
 新庄はびっくりしていた。

「それに、僕に移植手術の費用を出してくれたのも、新庄さんですよね」
 
 新庄は、何故知っているのかと言うように、悠一を見上げた。
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