連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第1章 プロローグ
ガチャッ。またドアが開いた。
パックスはびっくりして振り返った。
「どうかな……?少し落ち着いたかい」
優しい男の言葉が、パックスの心を開こうとしていた。
パックスは、思い切って聞いてみることにした。
「ねえ、ここはJapan? 僕はどうなる?」
その男は、返事をしてくれなかった。
何故か申し訳なさそうな、悲しそうな表情が、パックスには自分の運命を表しているように思えた。

少しの沈黙の後、その男は、それでも気を取り直したようにパックスに告げた。
「長い間、お風呂に入っていなかっただろう。今日は、入浴してみないか?君の国は入浴の習慣はあるかな」
突然の質問にパックスは驚いた。
「貴方は、僕の質問には答えてくれないのですね……」
「……」
パックスは、落胆を隠すように静かに答えた。
「僕の国では、水はとても大切な物なのです」
「そうか……。申し訳ないが、目隠しをしてくれないか。浴室に連れて行ってあげよう」
そう言ってその男は、優しくパックスに目隠しをした。
パックスが大声で助けを呼ばないと信じているのか、今回は猿轡はされなかった。
目隠しをされたまま、パックスは部屋の外に出た。彼が少し肌寒く感じ、ブルッと身震いをすると、その男はパックスを気遣い、寒くないかと聞いてきた。
久しぶりに人間らしい優しさに触れて、パックスは目隠しを濡らした……
少し肌寒い廊下をまっすぐに進むと、パックスの手を引く男の足が止まった。

「さあ、着いたよ」
男はドアを開け、パックスの目隠しを外してくれた。
そこは、古びた浴室だった。
右の棚には、同じく古びた籐の籠が置いてあった。
洗濯された清潔そうな着替えが、その籠の中にきちんと畳まれて置かれていた。
さらに驚いたことに、浴室は暖かかった。
パックスのために、あらかじめ暖房を入れておいてくれたようだ。
「Thank you……」
パックスは心から男の暖かさを感じ、思わず笑顔になった。
男も少しだけ嬉しそうな顔をした。
「ゆっくりしなさい。よく温まるんだよ」
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