連立の命(れんりのいのち)
連立の命(れんりのいのち)
完結
発行者:桃子(とうこ)
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2014/11/08
最終更新日:---

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連立の命(れんりのいのち) 第1章 プロローグ
パックスにとって、母の作るカレーにはやはり負けるけれど、最初の食事に比べると、今度の食事は疲れた彼の胃に優しく、心から美味しいと感じられた。

食事が終わり、全身にほんの少しゆとりと安らぎがおとずれると、彼はまた母を思い出した。
貧しくても、姉とパックスを大切に育ててくれた母。今頃どれほど心配し、悲しんでいる事だろう。再びパックスの心を、不安と心配が襲った。
その気持ちを少しでも和らげようと、窓の方に目を放った。わかって居た事ではあったが、やはり、そこには鉄格子がはめ込んであった。
(あの男は優しげだが、僕は囚われているのだ。逃げ出さないように監視されている)
鉄格子の間から窓を開けてみると、心地よい風が吹いて居た。
外は、緑に囲まれた低い山と、静かな川が流れて居た。
そして、そこに色を添えるように、小鳥が可愛い声でさえずっていた。
それは残酷なほど平和で、今のパックスとは対象的だった。
全てが不安で、大声をあげて叫びたかった。この現実が、夢であってくれらば良いとおもった。
パックスは何か安心できる物を探そうとは部屋を見回した。
部屋の隅に置いてあった小さなテーブルの上に、トランプと本があった。
ふと、姉とよくトランプをして遊んだ事を思い出した。母からは、よく飽きない物だと言われた。
考えていると涙が出てきた。どうして自分たちがこんな目に合わなければいけないのだろう。姉も自分も何も悪い事をしていないのに。どんなに貧しくとも、人の物に手を出した事はない。そんな風に育ててくれた母も、悪い事の出来ない優しい人なのに。
南アフリカのアパルトヘイトが崩壊した時、誰もが厳しい人種差別がなくなり、国民の生活が楽になると信じていた。
しかし、そう簡単には行かなかった。
国民の暮らしはちっとも楽にならず、歩けば100%犯罪に行き当たる国というレッテルまで貼られてしまった。その上裏では人身売買までされていると言われるようになっていた。
信じたくなかったが、今、パックス自身が真実を証明していた。
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