壱の魔術
第1章 第1章 プロローグ
しばらく、俺とシンはそんなぐだぐだ話を続け、いつの間にか教室に戻ってきていた。教室にはすでに亀井が教卓に居座っている。表情が怖い。
しかしやはりといっていいのかどうかは知らないが、亀井はパソコンをいじっていた。入学式にも出席しないでパソコンをいじくっているというのはどういう見解(けんかい)だ?今にこっぴどく校長かなんかの類(たぐい)のやつらに叱られるの違いない。教師が教師を叱る珍景(ちんけい)が目に見えてくるようだ。
「先生、パソコンで何をしているんですか」
どうやら、俺とシンが一番早く来てしまったようで他にすることがなかったがために、俺はパソ教にひ・ま・つ・ぶ・しの意味(いみ)も含めて聞いた。シンがそんなことを聞くとは限らないしな。
亀井は、視線をがっちりと俺に向けてくるとすぐにディスプレイに目を戻して、
「ななななんでもない。そそれより、もう入学式は」
「終わりましたよ。ほら、他の生徒たちも来ているではありませんか」
亀井は、それに気づくとなぜかかなりあわてた様子でノートパソコンをパタンと閉じるのではなく、バッタンと閉じた。パソコン壊れるぞ。
「そんなことより、何をしていたんですか?」
「なななんでもないって言ってるだだろう」
「まさか、らき☆す○とか涼宮ハル○の憂鬱みたいなアニメとか見てたりしていませんよね」
この台詞(セリフ)には、亀井を馬鹿にしている意味も含めてある。
亀井は、ビクンとコ○キングが跳ねるように驚き、硬直(こうちょく)した。どうやら、大正解らしい。あはは……呆れた。
「なぜ……なぜばれたんだーーー!!」
他の生徒が不思議(ふしぎ)そうに亀井を見ている。シンはふふふと突発的(とっぱつてき)に笑った。
「いやあ、本当にあなたは勘が鋭いです。まさか、そんなことまで当ててしまうなんて。あなたと同じ高校に行けてよかったと思いますよ。ふふふ」
その笑い方は不気味だ。やめてくれ。
結果、俺の台詞(セリフ)が起爆剤(きばくざい)となったのか、亀井は自分がアニオタであるということを自ら暴露(ばくろ)した。
生徒たちは爆笑の大嵐(おおあらし)しばらく停滞中(ていたいちゅう)である。……このオタ教師、本当に大丈夫なのだろうか。よく教師になれたな。
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