壱の魔術
第3章 第1章 梅雨前線停滞中-2
廊下のほうへ行くとそれをスネ○クのごとく息をひそめて待っていたのかどうかは知らないが、何者かが俺の首を腕で軽く締めると、ぶっとい声でこう言ってきた。
「言え」
す、す、ス○ークだああああ!!と絶叫するわけでもなく、俺はいたって冷静だった。
もうこんなことは何度もやられているので誰がこんな性(しょう)もないことをしているのかは分かっている。それにこのぶっとい声にも聞きおぼえがある。この声を1度でも聞いてしまえば、一生忘れることはないだろう。少なくとも俺はもう認知症(にんちしょう)になったりしなければ、末期(まっき)のがんのように忘れることは手遅れだ。
俺は、とりあえず肘打(ひじう)ちをそいつにして、
「何の用だよ」
と半(なか)ば呆れたような声で聞いた。そいつ―――西車大太(にしぐるまたいだ)は、大げさにぐほおっと声を上げ、その隣にいる男子が、西車の堅そうな石頭(いしあたま)を「おまえはスネー○か!」とツッコみながらひっぱだいた。
ツッコんだ男子はこちらを向いた。
「やあ、加納君」
その男子の特徴といえば一つしかない。
「おい!ポテト!!俺のことをたたきやがって―」
「お前がメタル○アネタ使って加納君を首絞(くびし)めたからだ!」
ポテト。そいつはそう皆から呼ばれている。その理由は、顔がジャガイモのように丸くて、誰がどう見てもジャガイモだろと言われればああそうだと返答することしかできないくらいに、シンクロ率が高い。というより、前世(ぜんせ)がジャガイモだったんじゃないかと俺は思う。……思ってしまう。
西車は、さっきから連続で攻撃を受けて、絶叫して……いなかったがポテトの攻撃には少し痛そうにしていた。だがしかし、すぐに立ち直った。回復力が高い奴だ。自然治癒能力(しぜんちゆのうりょく)のおかげで、ポーショ○がなくても薬草がなくてもケ○ルという魔法が使えなくとも、すぐに立ち直ってしまう、恐ろしい小ボスではないだろうかと疑ってしまうね。
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