桜花飛翔
桜花飛翔
成人向
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/08/12
最終更新日:2010/11/10 12:18

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桜花飛翔 第1章 芽生える桜―wakes up―
 そんな事を考えている間に公園へ辿り着く。二人は立ち止まる。嫌な感じは消えていないが、暖かい雰囲気も漂っていた。伊那はそれを聖域みたいだと感じた。街灯で明るいからかもしれない。
「あの、ありがとうございます」
 お礼を言っていない事に気付き頭を下げる。微かに青年は眉を寄せるが、すぐに安心させる様に表情を和らげる。
「囲まれていたのは気付いていたのか」
「あっ……見えないですが……何となく感じて」
 刹那、風が止んだ。
 青年は刀を握り直し走って来た道を見つめる。伊那もそれへ顔を向けた。目を凝らし、それを見逃さないように見る。胸騒ぎが強くなり胸元を掴む。
 一瞬、空気が揺れた。息を飲み青年を見る。伊那を守るように立つ背中が伊那に安心感を与える。
 空気の揺れが段々と激しさを増し、ドアでも叩いているかの様だ。それに比例して恐怖が伊那を支配していく。名も分からない青年の服を掴み、目を固く閉じる。自分では抑えられないほど体が震え出す。
 それを感じたのか、伊那を抱き寄せ、刀を構える。
 鍛えられている筋肉の感触を感じ、不謹慎だと思いながらも胸が高鳴る。それを感じる余裕も出て来た。暖かい温もりに縋る様に青年の体に腕を回す。
 とうとう空中にひびが入り、伊那はさらに強く青年へしがみつく。頭を撫でてくれる手に涙が出て来る。
 ひびが徐々に広がっていく。
 微かに舌打ちが聞こえ、伊那は顔を上げる。青年と目が合い頷きあう。一歩、また一歩と後ろへ下がる。
「榊」
 下がりながら伊那の耳元で囁くような声が響く。それが青年の名前だと気付くまで時間がかかった。
「日比谷榊」
 フルネームを教えられ軽く会釈する。榊の顔にある余裕。だが、状況は悪化していくのみだ。伊那には余裕など微塵も無い。
 遂に空中のひびが割れ、破片が光となり消えていく。再び冷たい風が伊那の髪を撫でる。叫び声のような風が二人の体温を奪う。頭が逃げろと叫んでいるが、足が竦んで動けない。
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