Shine~Masato & Hina story~
第6章 エピソード5
だけど、私はそれに気付かないフリをした。
全ての準備が整うと、私はケイタイを開いた。
時間を見るフリをしながら着信やメールがないかを確認した。
出勤30分前。
私はいつものように玄関の鏡で全身のチェックをした後、ヒールの高いサンダルに足を通す。
本来の目線よりも高くなると安心する。
「・・よし!!」
自分に気合いを入れて、私は部屋を出た。
◆◆◆◆◆
その日、私の想像以上にお店は忙しかった。
制服に着替えて受付カウンターに行くと、すでに満室でロビーには順番待ちのお客さんが溢れていた。
いつも顔を合わせるバイトの子達への挨拶もそこそこで私は山のようにある仕事に取り掛かった。
カウンター業務はもちろん、お部屋へのご案内、オーダーの受付・・・。
営業スマイルを絶やす事無く、慌ただしく走り回っているうちに時間はどんどん過ぎていく。
『ヒナちゃん、休憩入っていいよ。』
店長にそう言われたのは予定の時間を一時間程過ぎた20時だった。
そうは言われても、この忙しさの中、本当に休憩してもいいのかと不安になる。
『休憩しておいでよ。
一緒にカウンターに入っている子が小声で言ってくれて、やっと私はスタッフルームに向かった。
誰もいないスタッフルームに入るとどっと疲労感に襲われた。
ロッカーからお店に来る途中にコンビニで買ったパンとオレンジジュースを取り出して、私は力無く椅子に座った。
「・・疲れた・・・。」
コンビニの袋をテーブルの上に置き、私はその隣にうなだれた。
テーブルに頬を付けたまま私は壁の時計に視線を向けた。
今日のシフトは16時から0時まで。
本当は19時から1時間休憩だったけど、今は20時30分。
21時30分まで休憩して後半は2時間30分・・・。
私は頑張れるのだろうか?
・・・。
・ ・っていうか、シフト通りに帰れるの?
・・・。
・・・。
頑張ろう!!
私は背筋を伸ばしコンビニの袋からオレンジジュースのペットボトルを取り出し蓋を開けて喉に流し込んだ。
パンをかじりながらテーブルの上に置いてあったシフト表を覗き込んだ。
自分の名前の横を辿ると、私の名前の横には今日と同じ勤務時間が掛かれていた。
木曜日には“公休”の文字。
・・別に休みなんていらないのに・・・。
休んでも予定なんてないし、今は1人でいたくない。
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