Shine~Masato & Hina story~
第5章 エピソード4
首を傾げながらも私が足を止める事はなかった。
どんどん縮まっていく距離。
たった数歩だった私とその人の距離。
歩いている時はまるで遠い世界にいるように感じていたのに、実際は数秒で辿り着く事が出来る距離だった。
速度を速めることも遅くすることも無く近付いていく私をその人はポケットに両手を突っ込んだまま見つめている。
その人の目の前まで私が行くと、その人が口を開いた。
「どこだ?」
「・・はい?」
その人は私に視線を向けている。
だけど、私はその言葉を理解できない。
もしかしたら、私じゃなくて違う人に話し掛けているのかもしれない・・・。
そう思った私は自分の周りを見渡した。
たくさんの人が行き交っているけど、足を止めているのは私とその人だけ。
私の周りには、その人の知り合いらしき人はいなかった。
再びその人に視線を向けると、その人は怪訝そうに私を見ていた。
・・どうやら、その人は私に向かって話し掛けているらしい・・・。
・・でも・・・。
そうだとしても、やっぱりさっきの言葉は理解できない。
確か、私とこの人は路地を出てすぐに別れたはず・・・。
『バイバイ。』や『さようなら。』という言葉は無かったけど・・・。
『送る。』と言う申し出を断ったんだから・・・。
いくら考えても答えが出ることはなく、頭の中が混乱するばかりの私は恐る恐る口を開いた。
「・・あの・・・。」
「ん?」
「誰に話し掛けているんですか?」
「は?」
一瞬は怪訝そうな表情を隠したその人が私の質問を聞いて再び怪訝そうな表情を浮かべた。
「・・・?」
22