Shine~Masato & Hina story~
第5章 エピソード4
明日になれば今日のこの出来事さえも夢だったように思えるはず……。
数週間後には、私は淡い水色のハンカチのことも背の高いこの人の事も記憶の片隅に追いやられて思い出すことも無くなるに違いない。
元々生きる世界が違う私達がこうして言葉を交わして同じ時間を共有する事が不思議な事。
……頭の中では理解できるのに……。
なんで、こんなにモヤモヤした気分なんだろう?
そんな事を考えながら歩いていたから気付かなかった。
路地とメインストリートの境でその人が足を止めたことに……。
その人が足を止めた数十秒後私も足を止めた。
止めたというか……止まった……。
その人の大きな背中に勢い良くぶつかって……。
「……きゃっ!!」
勢い良くぶつかった所為で顔面を強打した私は高いヒールのサンダルを履いていた所為もあってバランスを崩してしりもちをつきそうになった。
お尻に激痛が走る事を覚悟した私は瞳を強く閉じた。
……。
……。
……?
私の身体に激痛が走る事はない。
その代わりに感じたのは、腰の辺りを支える力強い感覚。
「……?」
恐る恐る瞳を開くと、至近距離にある大きな身体。
「……危ねぇーな……」
……この言葉……。
さっきも聞いたような……。
少しずつ自分が置かれている状況を頭が理解していく。
考え事をしていた私は、この人が立ち止まった事に気付かなくって、背中に勢い良くぶつかった。
その衝撃でバランスを崩した私をこの人が助けてくれたらしい。
「ご……ごめんなさい!!」
私は勢い良く頭を下げた。
その瞬間、“ゴン!!”という鈍い音とともにおでこに激痛が走った。
19