Shine~Masato & Hina story~
Shine~Masato & Hina story~

いいね1
発行者:桜蓮
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:恋愛

公開開始日:2014/02/10
最終更新日:2014/02/15 23:17

マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
Shine~Masato & Hina story~ 第5章 エピソード4
高鳴る鼓動がやけに耳に付く。

その人は腕だけをゆっくりと動かし、手をポケットに差し込んだ。

何かを掴んで取り出す仕草を見て、一瞬、『凶器だったらどうしよう……』と思ってしまった。

だけど、それは、私の素敵な勘違いで、その人はただタバコの箱を取り出しただけだった。

慣れた手付きで箱を振り飛び出したタバコを一本口にくわえた。

タバコに火を点けるために取り出されたジッポ。

暗闇の中で微かな月の光がシルバーのジッポに反射して輝きを放つ。

金属音が響いて石が擦れるような音が聞こえると同時に炎が灯った。

その炎が辺りを照らす。

浮かび上がるその人の顔。

でも、私の視線はその人の顔じゃなくて手を見ていた。

器用にジッポを扱う大きな手。

その手に見惚れていたから気付いた。


ジッポの炎に照らされていたその人の右手が紅に染まっていた。

それを見た私の両手は勝手に動いていた。

タバコの先端に炎が触れようとした瞬間、私は大きな右手を掴んでいた。

突然、私が右手を強く掴んだ所為で、炎を灯していたジッポはバランスを失い私の手の方に倒れてきた。

……!!

手に感じるであろう感覚に私は思わず力を入れた。

私の手に触れようとした炎は間一髪のところで、伸びてきたもう一つの大きな手に払い落とされた。

地面にジッポが落ち、高い音が響く。

驚きのあまり固まっていた私の耳に届いた声。

「……危ねぇ……」

そう呟いたその人の表情は微かに焦っているようにも見えた。

「ご……ごめんなさい!!」

私は勢い良く頭を下げた。

……ヤバい……。

この人怒ってるよね?

私……殴られたりする?
13
最初 前へ 10111213141516 次へ 最後
ページへ 
TOP