Shine~Masato & Hina story~
第7章 エピソード6
終電が出た後の駅前は少しだけ人影が減っていて
終電を逃した人を乗せようと長い列を作ったタクシーのテールランプが幾重にも連なり赤い河のようだった。
その赤い河から少しだけ離れた所にあるベンチの前で足を止めたマサトさんは、
ようやく肩から手を放し、私をそこに座らせた。
「何がいい?」
マサトさんの口から突然出た質問には主語がなかった。
「はい!?」
主語のない質問の意味を理解出来ない私の口からはすっと呆けた声が出てしまい、
マサトさんに怪訝そうな視線を向けられてしまう羽目になった。
・・だけど・・・。
マサトさんの主語のない質問の意味を私が理解出来たら、
それはそれでおかしいと思う。
もし、私とマサトさんが子供の頃から一緒にいる幼なじみとか
長年連れ添った老夫婦とか
言葉がなくてもお互いに考えている事が理解出来る仲とかならまだしも・・・。
私とマサトさんは昨日が初対面で今日は2回目。
昨日だってそんなに話した訳じゃないし
今日だって会話らしい会話なんてしていない。
そんな私がマサトさんの言葉の意味を理解出来るはずもなく・・・。
ただひたすら首を傾げて立ったままのマサトさんを見上げるしかなかった。
そんな私を呆れたように見つめたマサトさんは
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