Pure Heart~葵とケンの物語~
第14章 制裁と慈悲と罪と罰③
「アツシがそういうことしてるっていつから知ってたの」
「葵があいつと付き合い始めてしばらく経った頃」
「うん」
「見た」
「なにを?」
「繁華街であいつが他の女と歩いているところ」
「そう」
「最初はたまたま女友達と歩いているのかと思った」
「うん」
「でも、普通は女友達と腕なんて組んで歩かねぇだろ」
「そうだね」
「それにあいつは有名だったから」
「有名?」
「女にだらしねぇーって」
「そっか」
「……」
「知らなかったのは私だけか」
「あぁ」
「だから、海斗はあんなにアツシを嫌っていたんだね」
いつだったか、朝から私を迎えに来てくれたアツシに海斗はあからさまに嫌悪感を剥き出しにしていた。
あの時はその理由が分からなかったけど、今ならその理由が分かる。
「お前は男を見る目がないんだよ」
……うん。
確かにそうかもしれない。
でも、それを弟に指摘される私ってどうなんだろう……。
「てか、どうしても聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
「なんであの男と付き合おうと思ったんだ」
海斗に尋ねられて私は少しだけ記憶を辿った。
192