Pure Heart~葵とケンの物語~
第14章 制裁と慈悲と罪と罰③
「な……なに?」
「お前、ケンさんの何を見てんだ?」
「え?」
「少なくともここ最近は誰よりもケンさんの傍にいただろーが」
「……」
「そこでお前は一体、何を見ていたんだ?」
私に問う声はどこまでも低くて冷たい。
怒っているというよりは蔑まれているような印象を受ける口調
に私は自然と背筋を伸ばしていた。
「な……なにって……」
初めて見る弟の表情に、私は完全に気圧されてしまっていた。
「全部、教えてやる」
「……」
「だけど、その前に1つだけ言っておく」
「……!?」
「その辺のバカ女みてぇになってんじゃねぇーぞ」
低い声できっぱりと言い放たれた言葉は、その意味を頭が理解するよりも先に心に突き刺さり、そして鉛
のように心にのし掛かってきた。
「ど……どういう意味?」
「お前が見てんのは、本当のケンさんの姿じゃない」
「本当の姿?」
「俺は、お前が誰から何を聞いたのか知らねぇーし、ケンさんがお前に何を話したのか知らねぇ」
「……」
「だけど、これだけは言える」
「今回、ケンさんが動いたのは全てお前の為だ」
「……」
「お前が忘れちゃいけないのは、ケンさんがあいつをどうしたかじゃない」
「……」
「お前の為にケンさんが何をしてくれたかじゃねーのか?」
……確かに、海斗の言う通りだ。
なんで私は気付く事ができなかったんだろう?
どこで私は大切なことを見落としてしまったんだろう?
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