Pure Heart~葵とケンの物語~
第3章 雲の上にある太陽
アツシは男友達としては最高だと思う。
見た目がいい割には全然気取っているところもないし
勉強も運動もそこそこできるのに、それをひけらかしたりもしない。
男女分け隔てなく、誰にでも気さくに接しているし、先生達からの評判だって決して悪い方じゃない。
友達として関係を築くなら最高の男。
だけど彼氏としては……どうなんだろう?
恋人として相手に望むものってなんだろう?
恋愛未経験の時には、相手の容姿とか優しさとか気遣いとか
そんなものを望んでいたけど……。
今、私が望むものは変わってしまったような気がする。
私がアツシに望むものは――……
“信頼”だと思う。
もう、裏切られたくない。
私の知らない所で、他の女の子と会わないで欲しい。
それを望む私は、心が狭い女なのだろうか。
浮気をされる度に私は疑心暗鬼になり
アツシの行動1つ1つが気になって仕方ない。
全ての行動に、疑いを持ち一緒にいても笑えないし、楽しくも無い。
ただでさえ、一緒にいられる時間は減ったのにやっと会えても昨日みたいにケンカ。
もう、いい加減うんざりする。
それなのに別れを切り出せない私は相当愚かなんだと自分でも思う。
これからも私は、こんな憂鬱な日々を過ごしていかなければいけないんだろうか?
私の口からは小さな溜息が零れ落ちた。
ちょうどその時だった。
莉央に手を引かれ、考え事をしながら歩いていた私は背後から聞こえてきた歓声のような声に我に返った。
ビクッと揃って大きく身体を揺らした私と莉央はほぼ同時に足を止め、背後を振り返った。
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