Pure Heart~葵とケンの物語~
第11章 暗闇
驚き固まる私を他所に
「俺が話したのは経験談じゃなくてあくまで一般論だ」
「……」
「まぁ、もし俺がその状況になったら限りなくヘコむと思うけどな」
「……」
「いや、そうでもねぇーか」
「……一体、どっちなんですか?」
「てか、もし俺が本気で惚れて付き合うなら、何があっても手放したりしねぇーだろうからな」
「……そうですか……」
なんかもうよく分からない。
最近、あんまり寝てない所為かもしれないけど頭が全くついていかない。
……っていうか、ケンさんという人がいまいち
よく分からないのかもしれない。
マイペースっていうか……。
コロコロと変わる表情の所為かその本性を掴みづらい。
幼い子どもみたいに無邪気に笑ったかと思えば、真剣な表情で張り詰めた空気を作り
悪戯が成功した子どもみたいに喜んでいるかと思えば、背筋を凍らすような威圧的な一面を垣間見せる。
単純そうで複雑。
掴めそうで指先すら触れる事のできない人。
私はそういう印象をケンさんに抱いてい
た。
「よし!!そうと決まれば飯でも食いに行こうぜ」
「……」
「やっぱりこういう時は焼き肉だよな?」
「……いや、焼き肉はちょっと……」
「はぁ!? なんでだよ!?」
「ここ最近、あんまり食べてないのに、急に焼き肉なんて食べたら胃腸がびっくりしちゃうと思うんで
……」
「いいじゃねぇーか。この際、ビックリさせてその反動で活動を再開してもらおうぜ」
「……その発想は全く理解できません」
「あれだよ、あれ。荒療治ってヤツだ」
「なんで荒療治が必要なんですか?別に普通でいいと思うんですけど」
「普通じゃおもしろくねぇーじゃん」
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