コトダマ~The Story of Ayu & Hikaru~
第8章 猛勉強
それに、ママが困ってしまうのにはもう1つ理由があった。
それは“お金”の問題。
聖鈴は私立校だから、公立校に比べてみても必要になってくるお金は半端じゃない。
その金額は、私が聖鈴に行きたいって言って『はい、どうぞ。』って言えるようなものじゃない。
「アユ」
「はい」
「聖鈴に行きたい理由は、ヒカルくんが聖鈴に行くからかい?」
「……パパも知っていたの?」
「あぁ,随分前になるけど、ヒカルくんのお父さんから聞いていた」
「……そっか」
どうやら、ヒカルが聖鈴に行く事を知らなかったのは、私だけだったらしい。
私は少し寂しくなった。
誰よりもヒカルの傍にいると思っていたけど。
本当は、私は、ヒカルの事を何も知らなかったんだ。
そう思うと、少しだけ寂しくなった。
「ヒカルくんのお父さんにその話を聞いた時、もしかしたら、いつかアユも聖鈴に行きたいって言うんじゃないかと思っていたんだ」
「えっ?」
思わず視線を上げると、パパは少しだけ寂しそうに笑っていた。
「さすがに中等部からだとは想像すらしてなかったけどな」
「……パパ……」
「お前が、どうしても聖鈴に行きたいなら頑張ってみなさい」
「えっ!? いいの?」
あまりにも呆気なく了承してくれたパパに驚いたのは私の方だった。
「もう、パパったら本当にアユには甘いんだから」
呆れ果てたように溜息を吐いたのはママだった。
「……」
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