コトダマ~The Story of Ayu & Hikaru~
第20章 迷いと決断
「『行く』って言ったんだろ?」
「うん」
「それなら、いつかきっとみんなで行ける」
「本当に?」
「あぁ、シュウさんは絶対に約束は守る人だ」
「……」
「だから、絶対に行ける」
「うん」
私の瞳からはとめどなく涙が溢れ零れ落ちていた。
寂しくて
悲しくて
なんであの時、私はあの胸騒ぎをヒカルに話さなかったんだろうって。
あの時、ヒカルに話していれば、シュウさんとこんな別れ方をしなくて良かったかもしれないって。
私は、悔しくて堪らなかった。
悔しくて堪らないのに、今の私には俯いて涙を流すことしかできない。
そんな、自分の無力さが本当にイヤになる。
膝の上で握り締めている手。
その手に食い込む爪。
私はその痛みだけを感じていた。
その痛みで罪悪感を誤魔化すように……。
「アユ」
優しい声が聞こえた次の瞬間、私の身体は温もりに包まれた。
クーラーの効いた部屋。
そこで、冷え切っていた身体にその温もりはとても心地よかった。
その温もりは冷たくなった心まで温めてくれるような気がした。
◆◆◆◆◆
どのくらいの時間、泣き続けていたのか自分でも分からない。
ヒカルは私が泣き止むまでずっと私を抱きしめ背中を擦ってくれていた。
自分だって悲しいはずなのに
シュウさんがいなくなって辛いはずなのに
ヒカルは私を慰めるようにずっと抱きしめてくれていた。
「ヒカル」
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