コトダマ~The Story of Ayu & Hikaru~
第17章 穏やかな日々
それに、点滴が外れてからは看護士さんの目を盗んでは病室から抜け出そうとしては、見つかって何度も叱られていた。
だから、ヒカルは退院を心待ちにしていたんだと思う。
「……そういえば……」
「……?」
「ヒカルって退院したらどこに帰るの?」
「は?」
「だって、“あの家”には帰らないんでしょ?」
「あぁ。」
「じゃあ、どこに帰るの?」
「どこって。」
「また、友達の家を転々としたりするの?」
「いや」
「じゃあ、どこに行くの?」
「マンション」
「マンション?」
「親父が聖鈴に合格した時に、マンションを借りてくれたんだ」
「は?」
「あ?」
「そんな話聞いてないんだけど!?」
「そりゃ、そうだろうな」
「……?」
「だって、言ってねぇーもん」
「……!!」
平然と答えたヒカルに私は絶句した。
それってかなり重要な事じゃないの!?
それを何で今頃サラッと言ってんの!?
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