コトダマ~The Story of Ayu & Hikaru~
第16章 言葉と想い
「……こんな所でなにやってんの?」
私の声にヒカルの身体がビクっと揺れた。
それから、恐る恐るって感じでヒカルは振り返った。
それは、こっそりと悪戯をしていた子供みたいだった。
「お前こそなにやってんだよ?」
「誰かさんが急にいなくなるから心配して探しにきたんじゃない」
「……」
「全く、タバコを吸いに行くなら起こしてくれたらいいのに!!」
「……」
「お陰でこんな夜中に探し回ったんだからね!!」
横目でヒカルを睨むと、ヒカルは気まずそうに頭を掻いた。
「……悪ぃ……」
ヒカルはとても小さな声で謝った。
◆◆◆◆◆
ヒカルの隣に並んで私は手すりにもたれ掛かり私はそこから見える夜景を眺めていた。
心地いい夜風が頬を撫でる。
「ねぇ、ヒカル」
「うん?」
「お母さんには連絡しないの?」
「あぁ」
「そう」
『多分、心配してると思うよ』
喉まで出掛かったその言葉を私は飲み込んだ。
ヒカルは意地を張っている訳じゃない。
連絡をすることで余計な心配をかけたくないんだと思う。
ヒカルがそう言った訳じゃないけど。
私は、なんとなくそう思った。
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