ワイバーンギフ
第1章 誕生前夜
「わかりました。能登島代表のカワイイデザインを期待します。それから、今日の能登島代表のファッションなんですが?前に出て、見せて頂けますか?」
私は躊躇した。クラブとは何の関係も無い。動かない私に厚見社長がー女性誌を敵に回すなーとささやいた。
「能登島代表?駄目でしょうか?」
今度は膝肩くんが-女性ファンは子供とダンナさん 恋人を連れてきます。ここは攻めて下さいーとささやいた。
「はいっすいません」
立ち上がった私にースマイルーと社長さん全員が口角を上げて見せた。その似合わなさに、私は笑う事ができた。
舞台下のカメラマンが一斉にフラッシュを光らせる。クラスの女子の声が聞こえてきそうだ。
ーあの顔とスタイルでよくポーズとってられるねーと……。
「能登島代表!右に向いて下さい」
「正面をもう一枚!」
「じゃあ左にお願いします!」
救いは、掲載されたこの写真の後ろで、社長さん達が不気味に笑っていた事だ。全力で子供の私を援護してくれたのだ。今でもこの写真を見ると涙が出る。
「能登島代表すいません。無理な注文に応じてくださって。でも、とっても素敵ですよ!来月号の表紙は能登島代表でと編集長に押しますから期待してて下さい!」
冗談じゃないと思いつつも、笑うしかなかった。
「ちなみに…全部能登島代表のコーディネートですか?」
瞬間、待場谷さんに恩返しだとひらめいた。
「いえ。全てヘアメイクルーム マチバヤの待場谷志津子さんにお願いしました。控室にいらっしゃいますので、記者会見終了後にご紹介します」
「ありがとうございます!。是非取材させて下さい!」
この取材がマチバヤスタイルに繋がり、待場谷さんはパリに行く事になる。
「他にご質問は?」
背の高いスーツの記者が手を上げた。
「フリーの山際です。よろしくお願いします」
他の記者さんと目の鋭さが違う…と思った。この記者さんが、最大の山場、ラスボスだった。
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