訪問者 ―visitor―
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発行者:秋月乱丸
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ジャンル:SF

公開開始日:2014/01/19
最終更新日:---

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訪問者 ―visitor― 第2章 at the school 
 湯浅沙綾(ゆあさ さあや)が自分に向かって歩いて来る。いや、正確には自分の右隣の席に向かって歩いて来る。その姿だけでなく、動作も美しい事を認めざるを得ない美作健吾(みまさか けんご)。元々のプロポーションに加え、背中からうなじを通って頭まで綺麗に伸びた姿勢、律動的な手足の動き、自然に伸ばされた指の形に至るまで――見事としか言いようが無かった。

 その姿を見た男子達からは低い歓声が漏れ、同性であるはずの女子達からも「綺麗……」とため息交じりの呟きが幾つも聞こえる。
 だが、その芸術的とさえ言える沙綾の容姿・所作の全てが人外の物に思えてしまう健吾。昨夜の体験を考えてみれば、当然ともいえるだろう。
 そしてまた直感が働く。頭の中にクシャクシャになった針金を突っ込まれたような感覚。ろくでもない事が起こる時の感覚だった。
 目の前に来た沙綾の、艶やかで柔らかなピンク色の唇から健吾に向けて発せられた一言。それが健吾の警戒心、さらには不安や恐怖をストップさせた。

「よろしく。美作君」

「ああ……って、え?」

 健吾の間近まで近付いた時、不意に天使の様な笑顔で挨拶をされたのだ。それも名指しで。「なんで俺の名前を知ってるんだ?」と言う当然の疑問が数瞬遅れてしまうほどの、極自然で愛らしい、そして裏には謎を秘めた笑顔だった。級友全員も「え?」という表情になっていたのだが

「なんだ美作。お前、もう知りあいになってたのか?」

 担任の坂本の言葉をきっかけに、そこかしこから強烈な抗議の視線が突き刺さる。この年頃だ、誰と誰が付き合っているのかなど、嫌でも耳に入って来る。
 それに健吾が人前ではそれらしい素振りを見せない事を知っている者も多い。「お前彼女がいるのに! 普段の態度は何なんだ!」となるのも致し方ない事だった。が、それに気付く余裕すら無く、必死に首を振って坂本の言葉を否定する。だが右隣で席についた沙綾が平然とした声で肯定するのだった。

「はい。昨夜道端で偶然。ね?」
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