訪問者 ―visitor―
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発行者:秋月乱丸
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ジャンル:SF

公開開始日:2014/01/19
最終更新日:---

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訪問者 ―visitor― 第5章 last competition
 いつものルートで作山古墳を目指して走る健吾。本来なら「途中での寄り道」でしかない筈だが、今日ばかりはここが目的地だ。きちんと謝らなければスッキリしない。もう練習ではないのだからタイムは気にする必要はない。ゆっくりと走ればいいのだが、普段よりも遅くは走れなかった。陸上選手としての――いや、もう「元」がつくのだが――プライドがそれを許さないのだった。
 結局いつも通りのペースで作山古墳に到着してしまった。人目が無い事を確認して斜面を登って行く。周囲からは見えにくい中央部に進んで行くと、程無く細長い小型船『アールマティ』が降りてきて――何故か今日は健吾の目の前に着陸した。いつもは少し離れた場所に着陸していたのだが、何か心境の変化でもあるのだろうか。
 健吾が見ていると、どういうメカニズムなのか船腹をすり抜けるようにして沙綾=ヌアサが降り立った。いつもは幾分離れた場所で見ていたので気付かなかったのだろう。一体どうなっているのか、まるで想像もつかなかった。

「来てくれたのね。今日は来ないかと思っていたわ」

 ゆっくりと歩きながら――少しだけ視線を落して沙綾が言う。

「そこまで子供じゃ無ぇよ」

 健吾はやや自嘲気味に言う。妙に対照的な二人だった。

「今日は……ご免なさい」

 少し視線を逸らして、沙彩が今日の事を詫びた。謝りに来た筈の健吾よりも先に。謝る側と誤られる側。あっさりと逆転してしまい、健吾は狼狽してしまった。経験不足がはっきりと表れている。

「いやいや、ヌアサが謝る事はねぇって! 今日の事は俺が……その……」

 上手く言葉が繋げない。格好のいい言葉を並べるには抵抗がある性質だし、こんな時に論理的な説明をするのは幾らなんでも野暮が過ぎる。逡巡しているうちに、沙綾が言葉を紡いでいく。

「いつか言ったわよね、私の星では論理が全てだって」
「あ……ああ、そうだったな」

 納得している場合ではない、早く本題に戻さなければ。しかし本題に戻したとしてどう言えばいい? やっぱりここは……と、まごまごしているうちに沙綾が続けてしまう。
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