訪問者 ―visitor―
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発行者:秋月乱丸
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ジャンル:SF

公開開始日:2014/01/19
最終更新日:---

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訪問者 ―visitor― 第5章 last competition
 息子の当然ともいえる疑問に健介が答える。

「気管支喘息は大きくなったら治る事もあると聞くが、お前はその兆候がなかった。とは言うものの、少しでも体を強くしておく方がいいのは間違いない。じゃぁ走るだけでも……と言うわけだ。その判断は間違っていたか?」
「……いや、正解だと思う。今の自分で良かったと思う」

 健吾は思う。体が強くなった事で自分に自信がついたのは事実だ。くるみと言う彼女が出来たのもそのお陰だろう。性格も明るくなり、友人も増えた。これはきっと一生の財産になるはずだ。――そして異星人ヌアサにも臆する事無く接する事が出来ている。美術部に入っていたら、きっとこうはいかなかった事だろう。

「ならいいじゃないか。生れついてのハンデを克服して、インターハイ予選でいい所までいった。この実績と経験はお前の将来を変える事になるだろう。この先、少々の困難ではへこたれる事もあるまい。それだけでも十分だ」

 父の言葉に頷いて一気に食事を平らげると

「後でひとっ走り行って来る」

 と席を立つ。そこへ 

「はぁ? もう部活は引退なんだろ? なんでまだ練習するんだよ」

 健治が当然とも言える疑問をぶつけた。

「練習じゃねぇよ。なんつーか……日課だな」

 さらっと言い残して自室に戻って行った。ベッドに転がって天井を見上げ、今しがた父から聞いた事を思い返す。確かに幼い頃の自分は、大人しくて人見知りで引っ込み思案で。いつも部屋で本を読んでいたように記憶している。外で遊べなかった分、空想の世界で遊んでいたのだ。その名残だろうか、運動部に入りワイルドな口調になった割に読書家だ。頭でっかちでは無く、かといって脳味噌まで筋肉なわけでもない。このバランスは両親のおかげなのだろう。感謝しなくては……。

 珍しく殊勝な事を考えていたが、ふと時計を見るといつもランニングをしている時間が近づいていた。ケータイを取り出し、くるみにメールをうつ。

『気持ちの整理はついた。走るのは止めない事にした。それと……今日はごめん』
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