訪問者 ―visitor―
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発行者:秋月乱丸
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ジャンル:SF

公開開始日:2014/01/19
最終更新日:---

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訪問者 ―visitor― 第5章 last competition
「ほらほら沙綾ちゃん、一次予選突破だよ! この調子で決勝レースまで行っちゃえ!」
「ねぇくるみちゃん、何回勝ったら優勝なの?」
「確か……二次予選各レースの上位二位までの選手で決勝レースをやるはず。それで勝てば……」
「つまり、後二回勝てばいいのね?」
「そう! 頑張れー!!」


 多少の時間をおいて二次予選が始まった。そして――そこで健吾の最後の大会は終わった。


 観客席の沙綾とくるみは、重苦しい沈黙の中にいた。

「……残念だったわね」
「……そうだね。あんなに頑張ってたのに。もっと……走らせてあげたかったな」

 どちらからともいう事無く立ち上がり、階段に向かって歩き出す。

「私、ちょっと様子を見てくるね……」

くるみが告げると、沙綾も頷いて返す。

「うん、私も後でちょっと。野暮な事はしたくないから、少しずらすわね」
「ありがとう」

 軽く手を上げて頷くと、走って行くくるみ。それを見送る沙綾の顔には、混じりっ気無しの笑顔が浮かんでいた。


 くるみは連絡通路の片隅で健吾を見つけた。健吾は壁に額を押しつけたまま動かない。拳は固く握り締められ、壁面で震えている。くるみは少し躊躇った後、そっと語りかけた。

「……残念だったね」
「……そうだな」

 くるみが来たのを、とうに気付いていたのだろう。驚きもせずに健吾は答えた。消え入りそうな声で。くるみはここに来るまでに、どう接すればいいのか考えていた。だが結論は容易に出なかった。「自分もIHに出られなかったし、おあいこだよ」とでも言うのか? そういう問題では無い。ならば優しい言葉をかけ続けるか? 女に慰められて喜ぶタイプでもない。そしてくるみが選んだ答えは――

「外で待ってるね」

 背中から健吾をそっと抱きしめて告げた。

「……かっこ悪りぃな、俺」
「そんな事は考えないで。……じゃ、後でね」
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