訪問者 ―visitor―
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発行者:秋月乱丸
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ジャンル:SF

公開開始日:2014/01/19
最終更新日:---

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訪問者 ―visitor― 第5章 last competition
「……!!」

 声すら出せない痛みに襲われ、木口の腕を叩いてギブアップのサインを出すのがやっとの状態だ。顧問の寺坂が止めに入って来て、ようやくブレイクである。

「お前ら無駄なところで消耗するなよ……」

 寺坂に呆れ顔で言われても、健吾としては被害者なのだからどうしようもない。皆に「まぁこのぐらいにしておいてやろう」等と言われても、納得がいかないのである。だが今は競技に集中すべきだ。気を取り直してアップを再開し始めた。

 観客席では沙綾とくるみが並んで座っているが、健吾達の騒ぎを見て「うわちゃー」となっていた。

「……くるみちゃん、これって?」
「ちょっと誤解されたみたいね」
「そうみたいね、私としては『観戦』がメインだったんだけど……」

 そうなのだ。ヌアサ=沙綾は既にくるみと打ち解けており、今日の応援に付いて来たという形なのだ。沙綾が健吾に対して恋愛感情を抱いていない事を確認してから、女同士の友情があっさりと成立したのである。
 ケータイ番号の交換は、沙綾が架空の番号を作り、適当に作り上げた端末(海外物と言う事にしている)でキャッチするという方法をとっていた。システム上の細かい方法は沙綾にしか分らない。

 そんな女性陣の心情をよそに、時間通りに開会式が始まった。偉そうな肩書きを持った人物達の長いスピーチが続く。せっかく温まった体が冷えてしまう前に式が終わったのはラッキーと言ってよかろう。

 そしてフィールドでは複数の競技が同時に進む。トラック競技と跳躍競技など、同時にやれるものは一気にやっておかないと時間がかかり過ぎるのだ。

 そして健吾がでる100m走は、最初に行われるのだった。

 男子百メートル走は、陸上競技でもトップクラスの知名度と人気を誇る。二百メートル走や四百メートルリレーの世界記録は知らなくても、男子百メートル走の記録なら大抵の人は知っているものだ。
 だがその反面、厳しいのも事実だ。何故なら高校生なら十一秒前後、世界の舞台なら十秒前後で全てが決まるのだから。コンマ一秒の差でも着順の違いは明白なのだ。そして毎日の練習によって、常にベストの力を出せるのがアスリートだ。コンディションさえ保てば、タイムのばらつきは驚くほどに少ない。せいぜいコンマ一秒からコンマ二秒というところだ。
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