訪問者 ―visitor―
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発行者:秋月乱丸
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ジャンル:SF

公開開始日:2014/01/19
最終更新日:---

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訪問者 ―visitor― 第5章 last competition
 約一か月後。五月最初の土日にかけて、インターハイ予選を兼ねた大会が開催された。場所は県立総合グラウンド。各校の代表が集まり、培ってきた力をぶつけ合う。投擲競技や跳躍競技ならまだしも、短距離走や長距離走は一発勝負だ。100m走など、高校生なら11秒程度で全てが決まるシビアな世界なのだ。当然皆ピリピリしており、独特の張りつめた雰囲気が立ち込めていた。
 貴重品やその他の荷物は観客席に置き、出場しない下級生が荷物番をするのが慣例だ。選手達はスパイクや必要品だけを手にグラウンドへと向かい、学校ごとに陣取りアップを始める。グラウンド内をジョグで流し、一周ごとにストレッチで体を伸ばす。体がほぐれるのと反比例して、テンションが上がっていくのが分かる。
 これが緊張に繋がらないよう、キャプテン・木口が皆に声をかけながらアップを続けていった。キャプテンらしい配慮だ。健吾はと言うと、自分の事で頭が一杯になっていて、周りの事が目に入っていなかった。いつもの様な周囲への気配りが出来ない状態なのだ。
 その様子を見た木口が気楽な口調で話しかける。気合いが入るのはいいが、それが空回りするようでは元も子もないのだ。

「今日は黒瀬さんの応援は無いのか? GWなんだから来れるだろ?」
「ああ、来るとは言ってたが……時間なんかは聞いてねぇな。そのうち来るんじゃねぇの?」

 健吾も身体を伸ばしながら答えはするが、まだ緊張がみえる。木口は――こりゃイカン、別の話題でも振るか――と観客席に視線を飛ばしてネタを探すと、丁度階段からくるみが姿を現した。――絶好のタイミングじゃないか! 偉いぞ黒瀬さん!――と内心ガッツポーズをとりながら健吾の肩を叩く。

「おい美作、黒瀬さんが……と?」
「はん?」

 マヌケな答えを返しながら振り向いた健吾の眼に、観客席に入って来たくるみの姿があった。それはいい。問題はくるみに続いて入って来たヌアサ=沙綾だった。二人して健吾を見つけるや声援を送り、手を振っている。
 くるみはオレンジのタンクトップにデニムのミニスカートと白のパーカー、パステルカラーのスニーカー、沙綾は体のラインが分かるタイトな白シャツと、七分袖のデニムジャケットと揃いのデニムのショートパンツ、そしてアンクルカットのブーツという出で立ちだった。
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